【完】るーむしぇあ。
中庭、屋上、部活で使っている教室……どこにも彼女の姿はない。


どうしてだか、もう帰ってしまったという選択肢は浮かんでこなかった。


気持ちを整理するまでは帰らないはず。

そう思ったのは、認めるのは嫌だけど、私と彼女に似た部分があるように感じたからかもしれない。



ひと通り探し終えると、いつの間にか夏の長い日も落ち、校舎の巨大な影が校庭を覆っている。


諦めようとした時、校舎から先生が出てくるのが見えて、私は先生の方へと歩き出した。



「せん──」

「先生!!」



……先生と呼んだ声は私じゃなくて、木下美波のものだった。
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