【完】るーむしぇあ。
砂埃を舞い上げた風が足元を通り抜けて、そのざらざらした粒が足へとぶつかる。

私は先生と木下美波の表情を交互に見て、緊張感から息をすることを忘れていた。


「どういう意味ですか?ソリストとしてといういうのは」


「コンクール曲にフルートのソロがあったら木下さんを選んでいたけど、今回は残念なことにソロはない」


「だからなん──」


先生は彼女の言葉を手で制して、微笑んだ。


「例えば自由曲、最初の16小節はどんなイメージで吹いているのかな?」


「……静かな砂浜に打ち寄せる波のように」


彼女の答えを聞いて、先生はうんと頷く。


そして突然、その視線は私に向いた。
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