【完】るーむしぇあ。
「走ってる姿が見えてさ、どうし──」
私は和希くんの口を手で塞いだ。
そして、視線で木下美波の方を指し示すと、和希くんはすぐに状況を察してくれたようで小さく頷く。
少し離れた青白い外灯の下のベンチ。
ここからでもわかる。
細い肩が小刻みに震えている。
痛いほどに彼女の気持ちが伝わってきて、ますます私はどうしたらいいかわからなくなる。
どんな言葉をかければいい?
なぐさめの言葉?同情?
"わかるよ"なんて安っぽい言葉はいらない。
だって、今の私もそんな言葉必要としてないから。