【完】るーむしぇあ。
「かずくんに聞いたの。佐々木さんが私を探してくれてたって」
あ、コンクールメンバー発表の日のことか。
彼女は足元を見つめながら、なぜかちょっと怒ってるような口調で話し続けた。
「だけど合宿のときの勝負、あれで勝っただなんて思わないでね」
いや、全然思ってないし……。
「敵に情けをかけられるなんて自分が情けないわ」
敵ってそんなはっきり言われても……。
彼女のずっと後ろには陽炎が揺れる。
意志の強い瞳が私を捕らえる。
「だからもうお節介なことしなくていいから……勝負はこれからでしょ?」