【完】るーむしぇあ。
* * * * *
『ここからだと坂を上らなくていいから楽だよ』と言った綾香ちゃんの言葉は、店の前にたどり着いてから理解できた。
なるほど、かなりの坂の上。
病院からだと同じ高さだからいいけど、下からだとちょっときつい。
夕陽が照らす高台に佇む少し時代遅れの建物には『喫茶 華月』の色褪せた看板が掲げられている。
あ、和希の自転車。
壁に寄りかかるようにして止められているそれを、少し離れてぼんやりと見つめる。
とりあえず、バイト終わるまで待機だな。
夏の陽はまだ落ちきるには時間があるし、言いたいことを整理しながら待つことに──
カランカラン