【完】るーむしぇあ。
店のドアベルはそんなに大きな音じゃなかったのに、私はびくっと驚いてしまった。


「和希、無理しないようにな」


「はい。ありがとうございます」


おじさんの声が聞こえてから和希くんがドアから出てきた。


ひとことだけしか会話は聞こえなかったけど、温かい関係が築かれていることがわかる。

それは窓からのぞくオレンジ色のライトと似ている気がした。


私は深呼吸してから和希くんの方へと足を向ける。

心臓がうるさい。

足が震えてしまいそう。



だけど──


「和希くんっ」


「佐々木?どうしたの?」


彼は止めてあった自転車の前で驚いた様子で振り返った。
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