【完】るーむしぇあ。
一瞬意味が分からずに立ち止まった私に、和希くんは自転車の後ろを指差す。

自転車の後ろに乗れってこと?


「失礼しますっ」


ほとんど飛び乗るようにして慌てて乗った自転車が少し傾いた。


「しっかり掴まってろよ」


「うん」


遠慮がちに彼の腰に手を回すと自転車は坂を下り始める。

キーキーとブレーキを軋ませて。

和希くんの体温を感じて。


少し無愛想な王子様と錆びた自転車。

きれいな夜景じゃなくて、ただの住宅街。



でも、私は今日のことを一生忘れない。

これから始まる日々は甘い甘いルームシェアになる……んだよね?

きっと。




END
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