【完】るーむしぇあ。
私は慌てて彼の後姿を追う。

ひと言、ありがとうって言いたかった。


『さ、桜井くん!!』


私の声は廊下に大きく響いて、そんな中でも彼はいつものように静かな表情のままこっちを振り返る。


『あの、ありがとう』


『……別に。筋が通らない話が嫌いなだけ』


彼は私を助けたわけじゃなかったのかもしれない。


だけど、それにどれだけ助けられたか、どれだけ勇気をもらったか、言葉では表現できないほどだった。



そして私は気付いたんだ────
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