オジサンが欲しい
陵辱されるかもしれない。
そんな予感が浮かび、全身に寒気を感じた。
一般的な独身の中年男性にしてみれば、ぴちぴちの女子高生に触れられるなど夢のような幸運だろう。
しかし寺尾にはそんなことを考えている余裕なかった。
このまま契約社員として働き続けるのかと言う焦りと、はやく安定した職に付かなくてはという緊迫感。
ゆえに、そんな肉欲だの色情だのということまで、考えている暇はなかった。
それだけに、免疫がない。
いま「襲われている」も同然の寺尾には、眼前の美少女が恐怖だった。
「胸で感じてるとか、女の子みたいですね?」
意地悪っぽく、少女は堪える寺尾の顔を覗き込んだ。
前髪で目を隠し、ふいと顔を背ける寺尾に、少女はぞくぞくと身を震わせ、頬染した。
「いいですね、その必死な顔。
純粋無垢で誰にも穢されていない人を、徐々に崩して行く。
あくまで私のものとして仕上げるための段取りに過ぎないけれど、これもまた、私にとっての快楽でしてね?」
狂ってる、と寺尾は前髪から垣間見える少女を見て思った。
触られたところから熱が消え、感覚を失って行くのを感じる。
「……っう……く……」
こんなところに閉じ込めていたって、警察がすぐ見つけに来るにきまっている。
本来なら今日も仕事が入っているのだ。
音信不通になった店員を、他の店員や店長が放っておくはずがない。
きっとすぐに異変に気づくだろう。
行方不明になったと別れば、きっと誰かが、通報してくれる。
寺尾はそんなわずかな希望を持って耐えていた。
「あー、その目。
その目!」
少女はぱっちりとした大きな目を見開き、寺尾を指差す。