オジサンが欲しい
【終】愛づる ーメヅルー
*
少女のそばで、男はぐったりと横に倒れていた。
前髪に隠れていて、目はよく見えない。
しかしその口元には表情がなく、垣間見えたその瞳は、塗りつぶされたように黒い。
「ふふ」
少女は痩せた男の身体を起こすと、その頭をそっと胸に抱いた。
上を向かせると、下からぼんやりとした色のない瞳が少女を見上げる。
少女は思い出していた。
そう。
まだ幼かったころ。
自分を知らない場所へ連れて行った男も、自分に同じことをしてくれた。
抵抗し続け、しくしくと泣いていた幼い自分が、いまでは馬鹿馬鹿しく感じる。
彼は私を、美しいものとして愛でていてくれたのだ。
警察が邪魔をしなければ、もっと彼に愛でてもらえたはずだった。