【短編】修学旅行の夜に
3
…とは言ったものの。
やっぱり一歩踏み出せないアホな私は、
どうしようとアタフタしてる内に…
「馬鹿。」
「ごめんなさい…。」
林クンは女子数名に囲まれていた。
『林クンっ超キレー!!』
『それよりお土産屋さん行こうー!』
…などなど、
可愛い声を出して腕を掴んでいる。
林クンはいつもの笑顔で応えているつもりだけど、
ちょっと困ってみえた。
…可哀想。
「はぁー…まぁいいや。」
ため息をついた奈々が言う。
「え?!諦めるの早くない!?
もうちょっと協力してよ!」
いつもなら迷惑なくらい無理矢理「喋って来い!」とか言うのに。
今日は本当に奈々らしくない。
「いいから!
それより、ここじゃ凄い混んでるから、
別の所行こ?
穴場見つけたんだ♪」
え!本当に!!?
正直、人混みは嫌い。
「突き当たりの階段昇ってすぐだから。
芽衣子先に行っててくれる?
私、寛太(カンタ)呼んでくる。」
「わかったー。」
寛太は奈々の彼氏。
付き合って今日で1年。
記念日に夜景なんて羨ましいな。
やっぱ記念日は2人きりが良いよね。
私邪魔じゃない…?