響〜HIBIKI〜
「明日、俺はTAKAHIROに同行だから、かなちゃんの迎えは10時に頼んであるから」

車から、降りる前に吉川が確認する。

「はい、じゃあ、いつものポストの前でいいですか?」

「そうだね」

吉川の送迎の時は、TAKAHIROのマンションの駐車場へ入るが、別のスタッフの時はマンションの裏側にあるポストの前で待ち合わせだった。

TAKAHIROのマンションの近くに部屋を探して貰っている最中だが、その話題になると、必ず、

「ずっと、ここにいればいいじゃん。家賃もいらないし、洗濯機とか色々買わなくて済むしさ」

とTAKAHIROは、引き止める。

「居心地いいし、一緒にいたいけどぉ…、吉川さんにも迷惑かかるし、事務所に内緒にしてるのが後ろめたいんだもん」

花奏は、口を尖らせる。

「じゃあ、事務所に言う?だって、うちの事務所、恋愛禁止じゃないし、先に言っといたほうが気が楽じゃん。それに、HIROさんはもう気付いてるかもしれないし」


…「かなちゃん、TAKAHIROがいるから東京に来たんだろ」…


TAKAHIROは、以前HIROに言われた言葉を思い出し、そう言った。


「えっ、そうなの?禁止じゃないのは知ってるけど、HIROさんが気付いてるってどういうこと?」


「んー、かなが俺に気があって東京に残ってるって思ってるみたいだから」


「………」


自分のことだけで精一杯の花奏は、周りが自分をどう見ているのか考える余裕もなく、TAKAHIROの言葉に返す言葉がない。
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