響〜HIBIKI〜
TAKAHIROが立ち去った後、花奏はTAKAHIROの感触の残った手を握りしめ、ボーッと立ち尽くしていた。


「あら、かな、帰ったの?」


「あ、お母さん。ただいま」


キッチンの片付けが終わったオーナー婦人が玄関ホールをとおりかかった。


「なに、ボーッとしてるの?」


「ね、お母さん、TAKAHIRO君ってテレビやライブで見るより何倍も素敵だね」


「そう、よかったわね。そんなにかなが喜んでくれて、お母さん達もこの仕事引き受けた甲斐があったわ」


花奏の笑顔に母も喜ぶ。


両親も東京であった花奏の苦労を思い、花奏の為に何をしてやれるのかと模索しているところに、またとない機会が巡ってきたと思っていたのだった。


「うん、ありがとね。感謝してる」


「明日も忙しくなりそうよ。かなも撮影あるんだから、早く休みなさい」


「うん、お母さん。おやすみ」


花奏は母親にハグをして部屋へと戻った。
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