牙龍 私を助けた不良 下
教えてもらった住所の場所に来てみれば、結構高いマンションが立っていた。
さすがに部屋までは知らないし、入口にガードマンがいたので来客者用の駐輪場にバイクを停めた。
「さっきの電話聞いてるか?」
『・・・うん、ちゃんと聞いてる』
少しだけ怯えたような声がした。けれど、憔悴した様子も伺えた。
会いに来るのは、止めたほうが良かったかもしれないが、それでも、今じゃないといけない。
「──凜華に会いたい」
『・・・どうして、今』
「話がしたいんだ、凜華。今がじゃないとダメなんだ」
凜華は話したくないというかもしれない。それでも、今じゃないと、二度とチャンスは来ない気がする。
どんな話をされても、受け入れられる自信はある。暫く沈黙が続き、声を出そうとした瞬間、凜華が言った。
『・・・13階の部屋にいる。そこで、待ってる』