牙龍 私を助けた不良 下



出来たばかりのこのマンションは、15階建でそれぞれの階に一つの部屋しかない高級マンションだったようだ。


なるほどな。来れば分かるよ、と凜華が言ったことに対して納得した。


コンシェルジュにタオルを返すと、礼を言ってから、正面にあるエレベーターに乗り込んだ。


エレベーターの窓から外を見てみると、雨が少し強くなったようだ。窓に水滴が強く打ち付けている。


・・・こんな雨は、あの日以来だ。


何年か前にも、こんなふうに雨の降り続いた日があったと思う。


忘れもしない、いや、忘れられないだろう。約三年前の冬、突如として桜が狂い咲きを見せた日。


そんなうちに、エレベーターは音もなく13階へと静かに到着した。



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