牙龍 私を助けた不良 下
・・・後は勝手にしろってことか。
ミライが入っていったドアを少し見つめてから、小さく息を吐き、軽くノックをする。
「凜華、いるのか?」
「・・・・・・」
「入るぞ?」
返答がないが、人の気配は有るので確実にいる。ドアノブを捻って、ゆっくりとドアを開けた。
──視界に写ったのは、さっぱりとした部屋だった。白を基調としたそこは、あまり生活感を感じさせない。
本がぎっしりしりつまった大きめの本棚、小綺麗な机、クローゼット、ソファー、柔らかそうな布団のしかれたベッド。
制服を掛けていたり、教科書類が整頓されて並べてある机があるので、おそらく凜華の私室だろう。
パタンとドアを閉めながら中を見渡せば、雨の降る町が見える大きなガラス窓の前に座り込んでいる小さな姿を見つけた。
いつもより小さく見える背中に、今にも消えてしまいそうだと感じずにはいられない儚さを感じた。