牙龍 私を助けた不良 下









あの日のような雨が

大地へと降り注ぐ

冷たく凍てついた雫だ



うっすらと町を覆う霧

眠ることを知らない夜の町


月の光が淡く降り注ぐ町




「──・・・・・」




一筋の涙を流しながら

静かな町を見下ろしながら

一人の少女が泣いていた



長い髪が震えている体を

包み込む緋の混じる長髪は

まるで至高の衣のようで



彼女は双眸を閉じると

白くて長い十の指を絡めて

薄雲から見える月に祈る




銀の声が月明かりに映え

緋の涙が闇夜に紛れ

陽の光が慟哭の雨を呼び続けた






< 2 / 89 >

この作品をシェア

pagetop