牙龍 私を助けた不良 下
あの日のような雨が
大地へと降り注ぐ
冷たく凍てついた雫だ
うっすらと町を覆う霧
眠ることを知らない夜の町
月の光が淡く降り注ぐ町
「──・・・・・」
一筋の涙を流しながら
静かな町を見下ろしながら
一人の少女が泣いていた
長い髪が震えている体を
包み込む緋の混じる長髪は
まるで至高の衣のようで
彼女は双眸を閉じると
白くて長い十の指を絡めて
薄雲から見える月に祈る
銀の声が月明かりに映え
緋の涙が闇夜に紛れ
陽の光が慟哭の雨を呼び続けた