牙龍 私を助けた不良 下
ドラマとか、映画みたいに作りものじゃない深紅の血は、見ているだけで恐怖を私に与えてきた。
卑怯な奴らと喧嘩してたら、ナイフとかパイプとか出してくるから、血が全く出ないなんてことはない。
だから、見慣れてたはずのそれに恐怖したことが、さらに私を恐怖させた。
今だってまだ怖い。
「今まで当たり前だったことが、たった一瞬で、過去になる怖さ。・・・木藤、その怖さが分かる?」
すぐ傍にいる木藤にそう聞けば、意外な答えが返ってきた。
いや、返答というよりは──・・・
「──御託はすんだか」
「え、」
「俺は、お前のそんな話を聞きに来たんじゃねぇ。お前の本音を聞くために、お前に会いにここまで来たんだ」