牙龍 私を助けた不良 下
私の本音を聞きに、来た・・・?それは、今私の言ったことが、私の本音ではないということ?
何も言えずに固まっていると、急に腕を捕まれて、顔を挙げてしまった。
驚く暇もなかった。すぐ目の前に迫っている木藤の瞳は、目を逸らしたくなるぐらい真っ直ぐで、でも逸らせない。
そうさせないくらい、私を真っ直ぐに見つめる青い瞳から、強い意志を感じさせた。
「はっ、離してっ」
「凜華」
諭すように名前を呼ばれて、私は瞬く間に怖くなる。木藤の言おうとしていることが怖い。
聞いたら駄目だ、と本能が激しく警鐘を打ち鳴らして、頭が痛くなる。
「嫌だ、聞きたくないっ」
「凜華」
「・・・っ!」
逃れようとしても、病み上がりな女の私が、男である木藤に叶うわけなんてなくて。
逆に引っ張られてしまった私は、木藤の腕の中へと閉じ込められてしまっていた。