牙龍 私を助けた不良 下
泡沫、黄昏の詩
雨は止まない。まるで消えない跡形を隠すために、全てを無くしてしまうためなのだろうか。
『ミー』
「・・・自信ないよ、ミライ」
『ミィー・・・?』
主人の腕に抱き抱えられながら、仔猫は彼女を不思議そうに見上げた。
いつもどこかボーッとしている主人の、最近よく見せる表情にはなかった悲しみ以外を見たのは、初めてのことだった。
──仔猫は知らない。
主人にそんな顔をさせているのが、彼女にとってどういう存在の者なのか。
静かに降り注ぐ雫の音を聞きながら、少女と仔猫は雨に沈んだ町を見つめた。