牙龍 私を助けた不良 下
時刻は7時42分。
どちらかが帰ってきていてもおかしくない。でも多分、兄さんではなく桃華の方だろう。
そして私は疑うことなくドアを開けて中に入り、足元を見てピタリと動きを止めた。
他者から見れば、ドアを半開きにしたまま下を見て固まっているなんて、おかしい格好でだ。
・・・これは。
玄関で固まった理由。それは、見たこともない『男物の靴』があったからだ。
誰のものか考えると・・・もしや、桃華の言っていたのはやっぱり男だったのか──いや、まさかな。
少しシスコンな兄さんが、そんなことを許すとは思えないし・・・。
取り敢えずドアを閉めて中に入り、靴を脱いで、家の中に入った。