牙龍 私を助けた不良 下



side:凜華


怖い。何が怖いのか分からないけど、私の心は『怖い』というふうに震えている。


正直じゃないという人間は、だからこそ誰よりも正直な人間なのだとアイツは言った。


人生で一度も嘘をつかない人間なんていない。弱い人間に、嘘をつかずに生きるといったそんな高等技術はないのだと。


今なら、それが私にも分かるような気がする。


怖くないなんて言えない。怖すぎて、何も、手につかなくなってしまう。


現に、空調の効いている部屋は快適なはずなのに、身体はとても冷えきってしまっているのだから。



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