牙龍 私を助けた不良 下
何とも初々しい反応ではあるが、そんな桃華に彼女はじとーっとした視線を向けた。
しかし、その背後ではごうごうと音を立てて炎が燃え盛っており、大きな牙をちらつかせ、目をキランと光らせている龍がいた。
何よりも疑い深いのか、シスコンなのか。とにかく彼女は、桃華が心配でしょうがない様子だった。
恨めしいというか、なんというか。機械的に表現してみるなら、『排除対象』に値するかどうか見定めているというか。
「全くの誤解だっ」
「はっ、見苦しいやつだな」
そして、相手の意見を聞いているような感じではない。むしろ、無視していると言っても過言ではない。
ところが、桃華が再び説得を始めると、彼女は小さく溜め息を吐いた。
仕方ないな、というふうなそれにぱあっと明るい表情になって、桃華が彼女に抱き付いた。
「取り敢えず、事故だったとは認めてやる」
「本当な「但し、勘違いするな」
「「え?」」
「私が認めてやるのは先の件だけだ。──お前、有宮戒希と言ったか?」