牙龍 私を助けた不良 下


何とも初々しい反応ではあるが、そんな桃華に彼女はじとーっとした視線を向けた。


しかし、その背後ではごうごうと音を立てて炎が燃え盛っており、大きな牙をちらつかせ、目をキランと光らせている龍がいた。


何よりも疑い深いのか、シスコンなのか。とにかく彼女は、桃華が心配でしょうがない様子だった。


恨めしいというか、なんというか。機械的に表現してみるなら、『排除対象』に値するかどうか見定めているというか。



「全くの誤解だっ」


「はっ、見苦しいやつだな」



そして、相手の意見を聞いているような感じではない。むしろ、無視していると言っても過言ではない。


ところが、桃華が再び説得を始めると、彼女は小さく溜め息を吐いた。


仕方ないな、というふうなそれにぱあっと明るい表情になって、桃華が彼女に抱き付いた。



「取り敢えず、事故だったとは認めてやる」


「本当な「但し、勘違いするな」


「「え?」」


「私が認めてやるのは先の件だけだ。──お前、有宮戒希と言ったか?」




< 41 / 89 >

この作品をシェア

pagetop