牙龍 私を助けた不良 下
乱音、緋と狼と



side:凜華


時刻は20時37分。


前を走っている車を追い掛けながら、ルートをきっちりと頭に入れていくことだけは忘れない。


何とも複雑に入り込んだ場所は、地元の人間でなければすぐに迷ってしまいそうだ。


フルフェイスを撫でている風の音に耳を傾けながらも、前方の車を見失わないように、一定距離を保って着いていく。


やがて、自宅から走り続けて十数分で、繁華街の外れにある廃墟と化していた建物の前で止まった。


そこにある数十台のバイクには、この辺りでは有名なとある『暴走族』のチームシンボルであるマークが刻まれていた。


邪魔にならないところに単車を置くと、メットを脱いでハンドルのところに軽く引っ掻けた。



「ここなのか、有宮」


「あぁ」



──狼王の本拠地があるのは、ここだ。



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