牙龍 私を助けた不良 下
意外なことに、そこは隣町の裏町と呼ばれている場所に近くで、回りに不良や、そっち側の人間がたくさんいる。
裏町は私にとってとても馴染みの深い場所ではあるが、それはまた別のはなし。
有宮はそこへと私を案内した。ただし、通されたのは正面の入り口ではなく、非常口だったらしき所。
奥に進んで行けば、広い部屋──いわゆる幹部部屋についた。無人だったが、部屋の机にある飲み掛けのコップに、人がいた形跡を見た。
そして彼に促されて、中央にあるソファーに座り、その向かいに彼もまた座った。
「それで? 私に話があるとは何だ」
「詫びと提案があるんだ、緋竜」
改まったように言われて、こちらもそれなりに佇まいを正した。
──彼からの話は、何ともありきたりな内容であったが、最悪な事態だった。
「なるほど、な。有り得ない話ではないが、だから何でそういう関係になったんだ?」