牙龍 私を助けた不良 下



そんな彼女は、「ふむ・・・」と腕組みをしながら深く考え込んでいた。


青年──有宮戒希に、彼女は何処にでもいるような女の子に見えた。単に、ケンカをしている姿を見たことが無いからかもしれないけれど。



「(・・・何も私の緋龍という名は、私だけが自由にしていいものではない)」



そんな戒希をよそに、彼女は深く考え込み、彼に言うべきか言わないべきか悩んでいた。


彼女の『名』はただの名ではなく、たった一人を守護するために与えられた称号である。


称号『緋龍』は、回りの人間が思っているような意味など持たない。それ以上に大切な意味を待つのだ。



「・・・分かった。桃華を守ることには協力を惜しまないが、狼王の闘争に私は一切関与しない」


「構わない。寧ろ、あんたが協力してくれることの方が有りがたい」



そして、彼女は緋龍として、彼は狼王として桃華を守る協定を交わした。



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