牙龍 私を助けた不良 下



皆が強いと言った私は、私のことだけど、それは『緋龍』としての一面を指しているにすぎない。


緋龍という一面を含めた、弱くて非力な子供だった『緋姫凜華』のことを指してはいない。


カタカタ震えてしまう身体を、木藤はただ静かにぎゅっと抱き締めたままで、何も言わなかった。


でも言葉の変わりなのか、体温を共有するように、ぴたりと身体を密着させながら、宥めるように背中を優しく撫でてくれた。


身体が密着したことで、木藤の胸元辺りに頭が当たって、トクン、トクンと心音が間近から聞こえてくる。


・・・生きて、る。


何処か、頭の片隅でそう感じていた。




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