牙龍 私を助けた不良 下
桜井ひなたが亡くなったのは、凜華のせいではない。彼女が苦しむ必要はないはずだ。
それに、彼女が苦しむ理由は、責められなかったなんてことではないと思う。
──何よりも、凜華がすべきことは桜井ひなたに懺悔をすることでも、独りになることでもない。
それは、
「どんな理由があっても、『生きる』ことが凜華のやるべきことじゃないのか」
間違ってるか。言葉もなく問い掛けるように凜華を見据えれば、彼女は俯いて──ぽたりぽたり。涙を溢した。
凜華の小さな手の甲に落ちたその涙は視線を奪い、その音は外の雨音より大きく聞こえた。
ぽたりぽたり。また、ぽたり。空が泣き始める時のように雫は、落ちる。