牙龍 私を助けた不良 下
「意思なんて、わからないのに・・・」
どうして、私は無責任な人間なんだろう。なのに、どうしてこの大切なものを受け取ったんだろう。
窓に額を当てると、ひんやりとした冷たさが火照っていたのか心地好い。冷たい、それはあの日の冷たさによく似てる。
しばらくそうしていると、ズボンのポケットに入っていたケータイが、初期設定のままの変わっていない着信音を立てた。
『木藤 龍騎』
ディスプレイに表示された名前に、一瞬息だけ詰まった。
・・・あぁ、それが怖いんだ。
脳裏に浮かんだ言葉に、自分の滑稽さが浮かび上がっていた。
──嫌われる?そんなの、慣れてるはずだから。でも──。
息をゆるり、吐き出して微かに震えていた指先を通話ボタンに翳した。