牙龍 私を助けた不良 下



side:凜華


「木藤、木藤の言うことは当たってる」



木藤が息を飲んだのが、彼が動いた気配で何となく分かった。


あぁ、そうだな。


きっと、あの事件の関係者の大半はもうそんなに覚えてないと思う。それが私には理解し難い。



「責められたって、事実は変わらない。変わるわけがない。でも、それでも、私にとっては意味のあることだった」


「意味?」


「──ひなたが、過去にならないから」



だって、死んだひなたは、死んだあの日にすでに生きていたって過去の話にされるから。


責められたら、私はひなたのこと過去にしなくていいし、皆まだ覚えてるってひどく安心できる。



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