牙龍 私を助けた不良 下
顔を上げれば、彼は怒ったような悲しそうな表情をしていた。
どうして木藤がそんな顔をするのか、ぼんやりする思考では考えられない。
「そんなことしたって、お前が辛いだけだろうが」
木藤が叫ぶように言った言葉が、脳を揺さぶるように殴り付ける。
でもそれは、私の考えを否定するにも、神経を逆撫でするには十分すぎるものだった。
「それ以外に何の方法があったって言うの?」
「──っ何で、自分を犠牲にするんだよ!?」
「木藤は、私のすべてを否定したいのか!?」
口を割って飛び出した言葉に、感情が高ぶって、わけがわからなくなる。一種の錯乱状態に陥っているのだろう。
それでも、止まらない。それはまるで、止まることを知らない時の流れのように。