牙龍 私を助けた不良 下



私から本音を聞き出すための、木藤が意図的に行ったた挑発。


普段なら気付くようなそれに、引っ掛かるくらい感覚は鈍り、感情的になっていた。



「・・・苦しい」



改めて口にすると、入り込んで来るそれに抗うことは出来ない。

むしろ、しっくりくるというか胸につっかえていたものが取れたような気がする。



「苦しかった」


「あぁ」


「ずっと、苦しかった」


「あぁ、それでいいんだ」



木藤はそう言って、ふっと青い目を細めて頬をふわりと緩めた。

──そらは、まだ会ったばかりの時に、木頭が見せた優しい笑み。

あの時は綺麗だとしか思わなかったけど、今は心が何故かそわそわする。

それは、アイツに──ひなたに感じていたものと少し似ているような気がする。



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