私は彼に愛されているらしい2
沢渡に依頼されたコーラを買いに売店に行かなくては。

視線はもう俯かない、少なくともずっとではない。

有紗は空元気でも作り笑いでも出来るくらいの余裕を持ち帰ることが出来た。

「沢渡さん。買ってきましたよ。」

沢渡の自席にコーラを置いて有紗は笑顔を見せる。

「お、サンキュー。これ、データの入力をお願いしてもいい?」

渡された紙は今回の図面修正には直接関わりのないものだった、しかし次のステージに向けて必要となるものだと分かり少しの緊張が生まれる。

大事なデータだ。

しかし失敗したばかりの自分に仕事を任せてくれたことは凄く嬉しい、有紗はその気持ちが表情に全て出ていた。

「はい。預かります。」

「宜しく。」

沢渡の言葉に笑みを浮かべて答えると有紗はさっそく内容を確認する為、自席に戻りその作業に取り掛かろうと気持ちを入れる。

自席は数歩先にある近くの場所、ふと目に入った机の上に有紗は目を大きくした。

いくつかのお菓子がある、誰かが飴やチョコを置いてくれたのだ。それが誰かはだいたい想像がついて有紗の表情が緩む。

「みちるさん、君塚さん、かな?」

舞もあり得るがこの忙しさではきっと違うだろう。

言葉ではないが応援する気持ちをくれた誰かに有紗の心は救われた。

気持ちをいれて仕事をしないと人にも迷惑がかかる、有紗は気合を入れ直してこれからの業務に取り掛かった。

もう2度と繰り返さないように、どうすればミスをなくすことが出来るのか、今回の失敗の原因を記録してから次に進もうとその瞳に力を宿す。

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