私は彼に愛されているらしい２
「どうしたのー？冴えないね。」

間延びしたような言い方は彼独特のゆったりとした雰囲気によるものだろう。冴えないと言った君塚は毒を吐こうが何をしようが相変わらずイケメンであることと清潔感のあるスーツ姿で、なんと言うか眩しかった。

有紗にとって敵に近いイケメンは目の保養にならないので毒でしかないのが残念だ。

「色々とありまして…持田はこれから舞さんに話を聞いてもらうつもりなんです。」

「え？」

その言葉を聞くなり君塚は不思議そうな表情を浮かべ、壁にかけてあるホワイトボードに目をやった。つられて目を向けた有紗は驚愕の事実を知ることになる。

そういえば出勤したのにまだ帰宅のマグネットを外していなかったとぼんやり思った時だった。

「えっ！？」

ホワイトボードを見て思わず声が出てしまう。持田有紗の１つ上に書かれた吉澤舞の欄には、研修の文字が書かれていたのだ。

しかも今日から１週間はいないらしい。

「そんな～舞さーん…。」

フラフラした気持ちを舞に話すことで落ち着かせようと思っていたのに当てが外れてしまった。落胆の気持ちは素直に体に表れて有紗は全力で項垂れる。

そういえば研修に行くと先週言っていたことを思い出し情けない声が俯いた顔から漏れてきた。すっかり忘れていたのは有紗の方、そして悲しいことにみちるも同じ研修だと言っていたことも思い出した。

「はい、これもあげるから。」

そう言って君塚はチョコレートを差し出し振ってみせる。基本的には優しさで出来てるイケメンはこうしたことで部外のファンも存在しているのだ。

「ありがとうございます。…１週間耐えれなかったら君塚さんに聞いてもらうことにします。」

「いいよ～。思いきり笑ってあげるから。」

ニヤリとした悪い顔を見せて君塚は楽しそうに笑った。そしてまたふとした優しさにほだされ心を許しそうになった有紗は顔を引きつらせて目を細める。

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