私は彼に愛されているらしい２
自席で休憩していた舞の前に同じく自席に戻ってきた有紗が言葉を返した。

少し疲れた表情が見えるが声はそこまで沈んではいない、それだけで気力がまだ残っているのだと伝わってくる。

休憩しに来た訳ではない様で有紗は席に着くなりキーボードを鳴らし始め、集中モードに切り替わった。

手元に資料を広げているのか画面と手元を有紗の視線が行き来する、そして引き出しを開けたりファイルを取り出したりと、とにかく忙しそうに動いていた。

ずっとこんな調子でもう週末を迎えようとしている。

今週は一度も昼食を共にしていない、つまりまともに会話が出来ていないのだ。

マグに入ったコーヒーをすすりながら舞は好奇心と不満が入り混じっていくのを感じていた。

悩んだのか息を吐きながら左手で髪をかき上げる有紗のそこに指輪はもうない。

「ねえ、メールの返事位ちょうだいよ。」

ハッキリとした声をだしたつもりだったが有紗の反応は無かった。

それどころか固まったまま姿勢のまま視線だけが動いているようだ。

意図的に無視をしている訳ではない、そう分かっていても何とも言えない苛立ちが舞を襲った。

この一週間ずっと真相も聞けないまま噂や意味深な指輪の行方に振り回されていたのだ。

知りたい好奇心と待たされているというじれったさと、有紗が目の前にいる絶好の機会への執着が強くなって舞は少し強い声でもう一度声をかける。

「ねえ、有紗。メールの返事！」

「あっ…え？」

舞の声に気付いた有紗は少し経ってから内容を理解するとすぐにマウスを操作し始めた。

「舞さん、すみません。いつ送られたメールですか？」

「そっちじゃないわよ、携帯の方！あんた送ったって全然返事くれないじゃない！」

「は…え？」

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