私は彼に愛されているらしい2
「これだとウチが不利になる。」

「なので、ここはウチの思うようにやらせて貰うことにしました。」

「へえ…この案件通せたの。」

「取引ですよ。そのかわり変更点の部分は頭を捻らないと難しいんですけどね。」

「やれるだろ。似たような形状が隣の室で扱ってるやつにあった。片桐さんにあたって。」

「分かりました。片桐さんに相談してみます。」

東芝のけなし文句がないまま打ち合わせが終わるのは極めて珍しい。

沢渡と東芝、2人の会話は周りが聞き耳を立てるところであの東芝を納得させたという事実は噂がより真実味を帯びていくのに役立った。

沢渡が去った後、いつの間にか端末へ移動していた有紗の姿もなく東芝は島で1人になる。

その隙間をぬってきたのがキャスター機能を活用して椅子ごと登場した君塚だ。

「恋の力は凄いねー。」

「エンジンかかるのが遅えんだよ。」

東芝の本心としては仕事さえしてくれたのならそれでいい。君塚は沢渡の変化に感心しているものの、やはり他人事で評価を上げている訳ではなかった。

「次のステージが終わるまでこの調子でいけるかなー?」

「減速すればただの使えない奴に逆戻りするだけです。…にしても外野がうるせえな。」

「機嫌悪いねー。当事者になっちゃったから?」

君塚の誘う様な問いに東芝は片眉を上げて苦い顔をする。どうやら理由はそれではないらしいと君塚は小さく何度も頷いた。

「ここぞとばかりに周りが設計変更入れてくる。…これはヤバイ。」

「…どうヤバイ?」

「よくない話を上から聞いたんです。…下手すりゃ固まる。」

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