私は彼に愛されているらしい2
思いがけない報告を受けて君塚の目が大きく開く、その言葉の意味がどれだけ大きな影響を及ぼすか知っていたからだ。

この仕事をしている以上少なくはない結末だが、できればそうはなって欲しくない思いが強い。

「凍結ってこと。」

「持田さんも知ってる。だから必要以上に走ってるんですよ。」

「成程ねー。」

「何とかして進めたいんでしょうけど…ま、個人の力では無理な話なんですがね。」

そう言いながら資料を取り出してページをめくると車両全体の図面を広げた。それは今とは形が違う初期段階の設計図で日付は2年以上も前のものだ。

「懐かしいね。」

「ちょうど君塚さんが実は年上だったって気付いた頃です。」

「あはは、僕って童顔だからね。」

「…一緒に仕事が出来て良かったですよ。」

愛しむように図面を撫でて声を柔らかくする。

「ほぼ決まりか。」

「はい。」

「てことはこのチームも解散だね。」

「はい。」

寂しそうな声で東芝は何度も肯定の返事を呟いた。懐かしい図面のサイン欄には東芝と君塚の名前が並んで記されている。

この頃は今の様な形態ではなく東芝は君塚と同じ場所を担当していたのだ。

「で、持田さんの指輪の行方。気にならないのー?」

「指輪?」

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