私は彼に愛されているらしい2
「久しぶり。」

最初に声をかけたのは大輔だった。

「あ、うん。久しぶり。」

「仕事、忙しいの落ち着いた?」

「あー…うん、それはまだ続くかな。最後の後始末みたいな感じ。」

「帰り遅いの?」

「日によるけどね。大体10時まではいつも会社にいる。」

大輔が質問を投げてきてくれているおかげで思ったより普通に会話が出来ていると有紗は内心ホッとしていた。

こんな感じで続けていけば何とかなるかもしれない。なんとなくの光を見付けた気がして緊張で強張っていた表情もいくらかゆるんだ気がする。

上がりっぱなしだった肩も少しずつ力が抜けてようやくリクライニングに背中を預けられそうだ。

「大輔は忙しい?」

「いつも通り。」

「そっか。」

いつもどおりということは大輔も有紗と同じ様に日付を越える前にギリギリ帰宅できているようなレベルなのだろう。だとすれば土日も殆ど休息に当てている筈だ。

もしかしたら有紗がいない方がかえってゆっくり休めたかもしれない。

自分のしたことが全て悪い方向へ向かっていないかもしれない可能性を見付けて有紗は少し安心した。

会話をしながらも有紗がシートベルトをしめた頃を見計らって大輔は改めて口を開く。

「出発してもいいか?」

「うん、お願いします。」

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