私は彼に愛されているらしい2
ギアが入ってサイドブレーキが下りる、少しふかしたエンジンの音を聞きながら久しぶりのデートが始まった。
途端に有紗の心臓を鷲掴みするような息苦しさが襲ってくる。
なんだろう、この感覚。おかしい。
車を動かすまでは何とかなるかもしれないと浅はかに考えていたこともどこかへ行って今では会話が見つからなくなってしまった。
大輔はもう話しかけてくれないのだろうか。そういえば運転中はいつも自分がずっと喋って大輔は適当な相づち担当だったような気がする。
つまりこの沈黙を消すには有紗が声を発するしかないのだ。
でもどうしよう、何を話せばいいのだろう。
普段なら何か浮かびそうな知恵も全く働かなかった。
車は確実に進んでいくが有紗の思考は足踏みするだけだ。
どうしよう、どうしよう。
口の中が苦くなっていくのを感じる。バッグを握りしめる手が小刻みに震えてうまく力が入らなかった。
簡単な話でいい、今日の天気でもいい、それでさえも思い浮かばない程有紗は完全に混乱していた。
沈黙は続けば続くほど次の声が出せなくなる。その焦りが有紗を余計に追い詰めていくのだ。
「有紗。」
ふいに名前を呼ばれて有紗は微かに肩を揺らして反応してしまった。
気付かれただろうか、そんな焦りが有紗の体を硬直させる。
1秒にも満たない間に有紗は身を硬くして手元に視線を落としたまま次の言葉を待った。
返事さえも出来なかったのだ。
何を言われるか想像もつかない。他愛のない世間話かもしれないのに嫌な緊張が有紗を包んだ。
大輔が声を発したこのタイミングが信号待ちで停車しているということに意味を持っているような気がしたから。
途端に有紗の心臓を鷲掴みするような息苦しさが襲ってくる。
なんだろう、この感覚。おかしい。
車を動かすまでは何とかなるかもしれないと浅はかに考えていたこともどこかへ行って今では会話が見つからなくなってしまった。
大輔はもう話しかけてくれないのだろうか。そういえば運転中はいつも自分がずっと喋って大輔は適当な相づち担当だったような気がする。
つまりこの沈黙を消すには有紗が声を発するしかないのだ。
でもどうしよう、何を話せばいいのだろう。
普段なら何か浮かびそうな知恵も全く働かなかった。
車は確実に進んでいくが有紗の思考は足踏みするだけだ。
どうしよう、どうしよう。
口の中が苦くなっていくのを感じる。バッグを握りしめる手が小刻みに震えてうまく力が入らなかった。
簡単な話でいい、今日の天気でもいい、それでさえも思い浮かばない程有紗は完全に混乱していた。
沈黙は続けば続くほど次の声が出せなくなる。その焦りが有紗を余計に追い詰めていくのだ。
「有紗。」
ふいに名前を呼ばれて有紗は微かに肩を揺らして反応してしまった。
気付かれただろうか、そんな焦りが有紗の体を硬直させる。
1秒にも満たない間に有紗は身を硬くして手元に視線を落としたまま次の言葉を待った。
返事さえも出来なかったのだ。
何を言われるか想像もつかない。他愛のない世間話かもしれないのに嫌な緊張が有紗を包んだ。
大輔が声を発したこのタイミングが信号待ちで停車しているということに意味を持っているような気がしたから。