私は彼に愛されているらしい2
「ごめん。」

「東芝さんも階段派なので車両設計部の男性はそうなのかと思ってました。」

そう言うと有紗は両手で先を急ぐような仕草をして沢渡を急かせる。

確かにあまりゆっくりとはしていられない時間だったことを思い出し、許される限りで先を急いだ。

「きみはカッコいいね。」

工場に向かう道路を歩きながら沢渡が小さな声で呟く。

しかししっかりと拾ってしまった有紗は目を丸くして少し前を歩く沢渡を見上げた。

「潔いというか…まあ男らしいとは少し違うんだけどね。凛としていて、芯が強いっていうのかな。勿論良い意味で言ってるよ?」

「あ、はい。」

「とにかく…最近の仕事ぶりを見ていたり、きみという人柄を知った上で言ってるんだけど…男の俺から見てもカッコいいと思うよ。」

いつもとは少し違う、低めの声に落ち着いた口調で話していることから沢渡が真剣に心の声を聞かせてくれているのだと有紗は感じていた。

だからだろうか、驚きが先に出て目を丸くしたまま口も開けてしまう。

「なに、その顔。」

「あ、いいえ。ちょっと驚いて…。」

「いきなり何言ってんだって?」

「いいえ、まあ驚きましたけど…嬉しくて。」

有紗は改めて沢渡の言葉を噛みしめ表情を柔らかくした。

そう、嬉しかったのだ。

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