私は彼に愛されているらしい２
「男らしいとはよく言われていましたけどね、強すぎるとか。でも…仕事ぶりを見て頂いてそういう言葉を貰えたのは…正直凄く嬉しいです。」

今まで女だからと蔑まされてきた記憶の方が多い分、どこかつまらないプライドを持ち続けていたところもあった。

それは否定しない。

必要以上に背伸びしたり、必要以上に鎧を身に付けて構えていたり、強いフリして仕事をしてきたのは自分自身が一番よく分かっていることだ。

その生き方を息苦しいとどれだけの人に言われただろう、肩の力を抜けとどれだけ嘲笑われたことだろう。

カッコいいと言ってくれた沢渡の心が有紗を認めてくれた気がして嬉しかったのだ。

「うん、嬉しい。…沢渡さん、ありがとう。」

それは有紗の心からの笑顔だった。

頬を赤らめて満たされた笑みを浮かべる、本当に心の底から喜んでいるのだと見る人に伝えるその笑顔は見事に沢渡の心を揺さぶった。

「えっと…どういたし、まして。」

とても見ていられず思わず沢渡は目を逸らして前を向く。

その後どれだけ話しかけられても横目が精一杯でまともに顔を見れなかった。工場に着いて仕事モードに入ったおかげでどうにかなったものの、すっかり有紗から目が離せなくなっていたのだ。

しかし、それだけに分かる。

有紗は東芝を意識して動くことの方が多い。

「東芝さん。」

一緒にいる間に何度読んだか分からないその名前に少しずつ嫉妬していきそうな自分をなんとか堪えた。

「昼だ。もっちー、どうせだから工場の食堂で食べてかない？」

「そうですね。東芝さんも一緒に…。」

「いや。俺は戻ってチーフと話するから。」

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