私は彼に愛されているらしい2
そう言いながら沢渡は携帯を取り出すと友達から送られてきた画像を表示して有紗に見せた。

画面の中にはまだ産まれたばかりの赤ちゃんが2人並んで眠っている。正直赤ちゃんの見分けなどつかないのだが大きな違いが無いことから一卵性なのだろうなと有紗は勝手に思った。

「可愛いですね。」

「俺には可愛さはよく分かんないんだけどね、でも感動はした。」

「ふふ。素直ですね。いいですよ、一緒に行きましょう。」

「サンキュ。誰か他に誘ってる?」

ふと声を潜めた沢渡に有紗は目を丸くした。しかしよく考える前に口から言葉が勝手に出て行ってしまう。

「いえ。まだ誰も…。」

「じゃあ俺とデートってことで。恥ずかしいしね。週末空いてる?」

「あ、はい。」

「よし。土曜の10時に待ち合わせて街に行こう。いい店知ってたら教えて。」

有紗の気持ちも追いつかないまま話はとんとん拍子に進んで約束を取り付けられてしまった。

土曜の10時、その言葉だけが頭に強く残り何となく首を傾げながら残りのカツカレーを頬張っていく。

その後は特に他愛もない話をしながら食事を終えて2人は自席のある棟へと戻って行った。

そして週末。

有紗の希望を通して2人は近くにある大きな駅にある待ち合わせスポットの前で集合することにした。

調度いいダイヤよりも1本早い電車で駅に着いていた有紗は化粧室で鏡の中の自分に目を細める。

地味すぎず気合も入れ過ぎていないパンツスタイルは女性らしさもちゃんと取り入れた納得のコーデだ、これなら過度に期待はさせないだろう。

一体何をしてるんだ。

先週の大輔の時とは正反対の気持ちで服を選んでいる自分に苦笑いをするしかない。

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