私は彼に愛されているらしい2
春らしく、可愛らしく、お気に入りの服を選んでいた時とは違って今日の服装はひたすらに「なりすぎないように」を心がけていた。

可愛くなり過ぎないように、デート服になり過ぎないように、地味すぎないように、会社でのイメージを壊さないように。

パンツスタイルは絶対条件だった。

「何やってるんだろうな、私。」

そう言いながら移動した視線の先にはバッグの中の携帯があり、そこには昨日来た大輔からのメールがある。

表示させればすぐに見れる文面をもう一度手にして見つめた。

「週末、会えないか。」

相変わらずの短い文面にどこか安心する一方で構える自分も否定できない。

土曜は既に沢渡との約束がある、夜だけでもいいと大輔は言うだろうが時間に追われるような気分で贈り物を選びたくなかったので日曜日を指定した。

大輔からは短い了承の返事があった。

何の飾りも無い誘いのメール、一行しかない簡単な文章を送るのにどれだけの勇気が要っただろう。

大泣きしたまま別れたあの日以来初めての連絡に有紗は戸惑っていた、次に会うとき何を言われるのか少し不安で怖いのだ。

おかげで少し寝不足かもしれない。

「っよし!」

勢いよく息を吐いて気合を入れると有紗は最後の身だしなみ確認をして待ち合わせ場所に移動した。

いつも遅刻ギリギリに来ている沢渡の事だ、先に待っているとは思えない。しかし念の為に早めに着いて待っているのが先輩に対する礼儀だと有紗は少し急いだ。

思った通り沢渡の姿は無かった。

安心したのも束の間、1分と経たない内に見慣れた姿が有紗に向かって近付いてきた。

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