私は彼に愛されているらしい2
「赤ちゃんの服ですよ。」

「うん、それっぽいね…。そっか…そんなに小さいのか。」

有紗の手の中にあるロンパースを見つめて沢渡は呟いた。

何か思いを深めるところがあるのか、有紗は何となくロンパースを差し出すと沢渡はそれを素直に受け取った。

しっかりと眺めて感心の声をもらす。

しかし急に片眉を上げたかと思えば途端に渋い顔になって目を細めた。

「沢渡さん?」

「これ…。」

「え?」

「高くない?これ1枚でこんなにすんの?」

心の底から信じられないという気持ちが表情にされて訴えている、有紗は目を丸くしたかと思えば笑ってしまった。

「赤ちゃん用品ってこんなものらしいですよ。値が張るからこそこういったオーガニックコットン系の贈り物は喜ばれるんです。自分じゃ買いにくいじゃないですか。」

そう言って有紗が指で示した先にはセットになって既に見本として包装されているものがある。

それを見つめて沢渡は納得したように何度も頷き、それと同時にバツが悪そうに頭を掻いて声を潜めた。

「…俺、ちょっとケチくさいね。」

「いえいえ。私も最初は同じ反応しましたよ。皆さんのお祝いを買う内に慣れただけです。」

何でもないと笑う有紗に安心したのか沢渡は苦笑いの中にも少しだけ安堵の色を見せる。手にしていた商品を棚に戻して改めて店内を見渡した。

優しい。

そんな印象を抱かせる店内の空間に赤ちゃんのマネキンはよく馴染んでいた。

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