私は彼に愛されているらしい2
少し大きなオモチャを選んでしまった為にかさばった贈り物は沢渡が持っている。

遠慮したが自分たちの上司への贈り物だからと首を横に振る沢渡に甘えることにしたのだ。

既に何を買うか決めていた沢渡は店に入るなり商品を手にしてすぐ会計に向かう。

手持ち無沙汰な有紗はあの時の沢渡と同じ様に店内を見渡してその優しい空気に触れた。

優しく微笑むマネキンの赤ちゃん、そしてズラリと並んだ小さな服たちを見つめて心を静かにする。

ふと、大輔の事を思い出した。

物件巡りの時に口にしていた言葉を聞く限りでは大輔は子供を望んでいるだろう。では自分はどうなのだろうか。

「お待たせ。」

沢渡に声をかけられて有紗は深く入り込みそうな意識を急上昇させた。

「買えましたか。」

「おかげさまで。ちょっと遅くなったけどご飯食べに行かない?」

沢渡の誘いに心の中では少し躊躇したが有紗は笑みを作ってゆっくりと頷く。

全てを沢渡に任せ、向かった先は和食のお店だった。

「意外です。沢渡さんって、パスタとかオシャレ路線の店を選ぶかと思ってました。」

「本当ならガッツリ丼の店に行きたかったけどね、もっちーいるからこの店にした。パスタとかはあからさまに喜びそうな子だったら選ぶかもね。」

興味無さそうにメニューを見ながらため息交じりの答えを出す。

瞬きを重ねると有紗は少し前から抱いていた気持ちを吐き出してみようかと息を大きく吸った。

「…沢渡さんって…意外と軟派じゃないんですね。」

「チャラく見えるって事でしょ?よく言われる。」

チラリと有紗の方を見たかと思えばすぐに視線はメニューへと戻ってしまう。

不貞腐れているのだろうかと少し心配になったが有紗が声をかける前に沢渡が自ら話し始めた。

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