私は彼に愛されているらしい2
今まで自分が決めつけていたことが触れて関わることで根底から覆されていく。

もっとあるのかもしれない、自分が見えていないだけで、見ていないだけでいいものは沢山ある筈なのだ。

待ち合わせた場所で別れた後、有紗は1人電車に揺られながら今日という日の出来事を考えていた。

明日は大輔との約束がある。

逃げ出したい気持ちを抑えるように有紗は目を閉じて電車の揺れに身を任せた。




*

ドライブにしようと言ったのは大輔の方だった。

気乗りはしなかったが自分なりのオシャレをして支度を進めていく。昨日と同じ様にパンツスタイルにしたのは特に理由は無かった。

ネックレスを付けようと鏡を覗きこめば、鏡越しにあるのものが映って有紗は動きを止める。

それは昨日の別れ際に沢渡から渡されたプレゼントだった。

オーガニックコットンの店で買ったのだろう、袋に印刷されたロゴでそれが分かり受け取った瞬間に有紗は顔を上げる。

「あげる。今日のお礼だから受け取ってね。」

断ろうと思ったがそれも出来ない雰囲気に受け取ってきてしまったこの袋、ラッピングされた中は大人でも使いやすいデザインのタオルだった。

予想外にも、いや、予想通りと言った方が正しいだろう。沢渡と過ごした時間の心地よさに有紗は戸惑っている。

傾きかけている心が今の気分を少しずつ下げてしまっているのだ。

また伏せかけた目を覚ますように携帯が震えてコンタクトを知らせた。

それは大輔から家に着いたという連絡だと察した有紗は急いで支度を終わらせる。

まるで仕事場に行くような感覚で上着を掴むとそのまま玄関の扉に手をかけて外に出た。

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