私は彼に愛されているらしい2
「私は…大輔の事を大切に思ってる。ずっと友達でいられたのもその気持ちがあったからだと思うよ、でも…。結婚の話が無くなったのに恋人のままでいられるものなの?」

素直に思ったままの気持ちを口にした。

有紗の疑問に少し視線を下げると大輔は考えをまとめて顔を上げる。

「分からない。でも俺は有紗にプロポーズした時にもう友達の関係を壊す覚悟を持ってた、だから俺の中で戻ることは有り得ない。それだけは分かる。」

「そんな…。」

「勝手でも俺はその覚悟を持って2人の関係に踏み込んだんだ。」

「…じゃあ、別れたらもう会えないの?」

「そうだな。」

迷いのない大輔の答えに揺れたのは有紗の方だった。

ここで別れてしまえば大切な人を失ってしまう、それは恋人でもあるし友人でもある大輔を失ってしまうことになるのだ。

だったら最初から関係を変えたくは無かった、勝手だと自分で認めているが本当に自分勝手だと大輔を責めてしまいそうになる。

唯一無二の大切な存在だったのだ。誇りでもあった。

自分ではどうしようも出来ない状態に有紗は悔しくて目を熱くする。付けてきた服の下に隠れているチェーンの指輪を掴んで口元に力を入れた。

「…私、気になる人が出来た。」

その言葉に今までフロントガラスを見つめていた大輔がゆっくりと有紗の方を向いたのが分かる。しかし有紗は前を向いたまま大輔と向かい合おうとはしなかった。

「私の事…仕事をしている私を見てカッコいいって言ってくれたの。強いとかじゃなく、無理してるとかじゃなく、頑張って私なりに男社会で生き抜こうとしている姿をカッコいいって…私凄く嬉しかった。」

「…そう。」

「今まで話してみたこと無かったけど、話してみると波長が合って一緒にいて楽しかった。意外な一面を知ったりして…私その人の事が今気になってる。」

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