私は彼に愛されているらしい2
そう、それは紛れもなく沢渡の事だ。

今まで話そうともしていなかったがいざ話してみると思っていたよりも話しやすい人であることが分かった。そして楽しめることも知った。

さり気ない気遣いが出来ることも知っている。

大きな失敗をしてしまったあの日、くじけそうな有紗に手を差し伸べてくれたのは沢渡だけだったのだ。

優しいことも、実は照れ屋なところも、相手のペースに合わせてくれることもここ最近で色々な沢渡の姿を知れた。

有紗は確かに彼の人間性に惹かれているのだ。

だからといって大輔とすぐにでも別れたいのかと言えばそうではない、ただ今の自分が大輔だけを見ている訳ではないという事を知って欲しかった。

この思いが伝わるだろうか。

不安になりながらも告げようと有紗が口を開いた時、それよりも先に大輔の声が沈黙を破った。

「たとえ俺と別れたとしても有紗はその人とは付き合わないと思う。…付き合ったとしても長くは続かないよ。」

思いがけない言葉に有紗は声を失ってその意味を考える。

「…何で?」

「有紗の今の精神状態が普通じゃないから。」

あまりの言いように目を見開いて驚きを露わにした。大輔は一体何を言いたいのだろう、次第に怒りが込み上げて有紗は拳を握る。

「今まで話したことが無かったってことは最近になって話したってことだろ?つまり俺とのことで揉めてる時だ、そんな状態で優しくされたら気が緩むに決まってる。」

「…何それ。」

「有紗は俺から逃げようとしてその人の所に行こうとしてるんだったら…。」

「私逃げてないでしょ!?」

声を荒げた有紗は驚いて振り向いた大輔を強く睨んだ。

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