私は彼に愛されているらしい2
「有紗にプロポーズをしたあの日…連れの結婚式でさ、そこで久しぶり会った先輩と話したんだ。」

大学を卒業して以来だから何年振りかの再会だったが、在学中はよく話をした面倒見のいい先輩だったと大輔は続ける。

左手の薬指に光るものを見付けた大輔はすぐに結婚したのかと先輩に尋ねた。すると先輩ははにかみながらもぶっきらぼうにそうだと短く何度も頷いてみせた。

生まれたばかりの子供も合わせて2児の父親なっていた先輩はどこか雰囲気も変わっている。

ひとしきり自分の事を話した後で大輔は自分のことを尋ねられた。

お前はどうなんだと。

特定の人と付き合わなくなって1年は経とうとしていた頃でしっかりと自分の家族を築いている先輩に話すのは気が引けた。

気ままに1人でいるとお茶を濁したがそれで許してもらえる訳ではなかったのだ。

「2次会に行くまでも行った後もずっと根掘り葉掘り聞かれてさ、俺もつい正直に誰と付き合っても長続きしなくて恋愛も結婚も諦めかけてるって話をしたんだ。そしたら有紗の名前が出てきた。」

「私の?」

「まだ繋がりはあるのかって。あるって答えたらそれが原因だって言われた。」

理由が分からない有紗は首を傾げて疑問符を浮かべ続ける。変わらず大輔はステアリングにもたれかかったままだったが、顔は上がっていた。

「最高に相性がいい相手が傍にいちゃ誰もが霞むだろうって。」

先輩がそう言った時の困ったような表情はまだよく覚えている。

大学にいた頃、やはり誰もが大輔と有紗が恋人同士であることに疑わなかった。しかし実際は仲がいい友人という関係でそれは周囲を落胆させたものだ。

それと同時に期待した女子が大輔に群がったがいつまで経っても仲の良さが変わらない有紗に嫉妬して別れることも何度かあった。

それでも大輔は有紗との関係を改めようとはしない、有紗も彼氏が出来たとしても大輔との関係を変えようとはしなかった。だから有紗の恋愛もあまりうまくいっていたとは言えないのだ。

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