私は彼に愛されているらしい2
「ここまで長く関係が続いているのは俺にとって有紗が一番なんだろうって、どの感情なのかそろそろ本気で見極めろって言われた。だから酒飲みながらも考えたんだ、それで気付いた。俺は有紗が女として好きなんだって。」

初めて口にされた大輔の心の動きに有紗は戸惑っていた。

どう返していいのか分からずただ聞く形になってしまっているが、本心としてはもっと聞きたい。

大輔の心に触れていたいとそう思っていた。

「気付いたら止まらなくなった。早くしないと誰かに取られるかもしれない、それに伝えられずにはいられなかった。この人だと思ったら何が何でも手に入れないと後悔する、そうやって今まで散々色んな人から聞いてきたから焦ってたってのもあるけどな。」

「何が何でもって…。」

「本当に結婚したいと思った相手はそうやって手に入れないと二度と現れないって…婚期を逃した人は口を揃えて言うよ。結婚できた人もな。」

だからどうしても有紗を手に入れたくて形からでも手に入れたくて焦っていたと大輔は続ける。

今までの付き合いが長い分、恋人の期間が短くても問題ないと勝手に思い込んでいた。

お互いの事を知り尽くしている分、どんどん進めて行っていいと勝手に思い込んでいた。

その結果、有紗を追い詰めてしまったのだ。

「有紗に泣かれて、自分のやってきたことの間違いにやっと気付いた。俺の一方的な思いで有紗を追い詰めたけど…だからって俺は諦めるつもりはない。」

そしてまた何かを思い出したのか大輔は苦々しい表情を浮かべて再び額をステアリングに押しつけた。

震える息が聞こえてくる。

「有紗の気になる人は…誰かは知らないけど、うまくいかないって言ったことは半分意地だよ。ごめん。…でも俺だって有紗を手放すつもりはないんだ。」

何度も繰り返す有紗への執着、次第にその気持ちでさえも有紗は不思議に思えてきた。

「そんな…そこまで思って貰えるほどの価値が私にあるなんて思えない。」

ここまで好きだという気持ちをぶつけて貰えるほどの魅力を持ち合わせている自信なんてない。

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